市民本位の健康医療に向けて

報告書

2009年1月18日 by KISK事務局  


医師不足対策緊急提言

平成20年8月5日 健康医療市民会議

1 「健康で文化的な最低限度の生活を営む」権利は憲法で保障された基本的人権である。

2 然るに近年の「医療崩壊」下にあって地域住民は、救急患者のたらい回しで助かるべき命を失う、産科医がいなくて子どもも産めない、小児科医の不在で子育てもできない、麻酔科医不足で外科手術も受けられない、地域住民の命を守る地域病院が閉鎖に追い込まれる等、我が国医療は深刻な状況にある。その最大の犠牲者は住民、市民、国民に他ならない。

3 このような「医療崩壊」をもたらしたのは、歴代政府の失政である。その責任は重い。

特に国民の命に関わる重大な問題を官僚任せにしてきた歴代首相、関係大臣、国会議員、政党の政治責任は重大である。

4 地域住民の命や健康に関わる行政は、その最大の受益者であり被害者ともなる地域住民、市民、国民の意見が最優先で採り上げられるべきにもかかわらず、これまでの医療改革では医師会等との間の利害調整に終始してきたのではないか。また最近では「構造改革路線」上で医療費抑制ありきの、「国民不在の改革論」が横行している。

5 「医療の崩壊」は、医療の最大の受益者であり被害者ともなる患者・市民、何よりも国の主権者である国民の協力なくしては立て直すことはできない。現場の実情を肌で感じていない中央官僚主導では事態は悪化するのみである。地方分権・地域主権を推し進め、かつ、地域住民、市民、国民の声が直接反映される仕組みに組み替えなければならない。これがなければ制度の改革も運営も失敗に終わることは火を見るよりも明らかである。改革を論ずる厚労省審議会に少数の患者・市民を加える程度でお茶を濁すわけには参らない。この際、内閣としてはもちろん国会議員個々に、あるいは政党として、利益団体の顔色を覗うのではなく、患者、市民、国民の声を直接聞く運動を大々的に展開すべきである。その姿勢の有無により誰が真に患者・市民・国民の味方か、自ずから判明するであろう。市民・国民は選挙を通じて、その評価をすることになる。

6 多くの改革を要するが、緊急課題として先ず「医師不足」の問題を取り上げ、その解消のための方策を患者・市民の立場から提言する。

7 我々の提言は別紙「患者・市民が要請する医師不足対策」のとおりであるが、この提言は、「健康医療市民会議」において、関係国会議員、医療関係者、市民会議メンバーの三者による「医療改革懇談会」(三者会)(座長・大竹美喜・国際科学振興財団会長)で議論を重ねてきた成果を基に患者・市民の立場から同市民会議としてとりまとめたものである。

8 改革論議には財源論を避けては通れない。我々は「国家は本来国民福祉を実現するために存在する」との観点から、医療・福祉を実現するための所要財源を負担することにやぶさかではない。ただし、それには

(1)行政の無駄は徹底的に排除する。また薬漬けなど医療費の無駄は大胆に切り捨てることも必要である。

(2)情報公開を強化し、税金と医療費の使途の透明性をより高める。

(3)患者、地域住民、市民、国民本位の医療改革をする。

(4)このため患者・市民の参加の下、その考えが施策に十二分に反映されるよう真の「医療民主主義」を確立すること。

が前提となる。これらの要件が充たされれば、医療・福祉の財源に使途を限定した消費税の増税も負担の限度でやむなしと判断する。

9 「医療崩壊」がここまで深刻化したことについては、我々市民・国民も責任があると自覚すべきである。政治は選挙の機会だけ「暫定主権者」で「お任せ政治」、自分の命までも「お任せ医療」で丸投げという「自己責任不在」の風潮は、今こそ厳しく反省し速やかに改めなければならない。さもなければ「医療崩壊」に止まらず「日本崩壊」へと転落していくであろう。「お任せ社会」から「自己責任社会」へ、「評論家」から「主権者」へ転換すべきである。

10 幸い既に兵庫県丹波市県立柏原病院、千葉県東金市県立東金病院などでは、市民が地域医療を守るため自ら立ち上がっている。今後こうした動きを我々市民が連携して更に盛り上げていかなければならない。救急車の私的な悪用、モンスター患者の要求、医療事故に対する過度の責任追及や処罰要求なども良識を持って患者・市民の自己抑制や相互牽制で減少していかないと結局は税負担の増加、医療水準の低下など患者・市民に大きな不利益をもたらすことになる。患者・市民の「自己責任」を市民運動として啓発を進めて行きたい。

11 患者・市民の立場から上記のとおり「医療改革」とくに「医師不足対策」を要請するものである。                    以上

平成20年8月5日

健康医療市民会議代表 梶原 拓(日本ヘルス協会理事長)

舛添要一 厚生労働大臣殿

メディカルスクール創設要請

「メディカルスクール」創設の要請

平成20年9月5日

医療改革懇談会 座長 大竹美喜
健康医療市民会議 代表 梶原 拓
構想日本 代表 加藤秀樹

既に現在、深刻な医師不足により患者・市民が大きな被害を蒙っているが、今後さらに医療崩壊が進むことは、その最大の被害者である患者・市民として耐え難いものがある。                           医師不足対策としては、

1 既存大学医学部の定員増も必要であるが、同時に

2 学士入学を前提とした医学教育課程、いわゆる「メディカルスクール」の創設を行うべきである。その理由としては、次の5利点があり、現在および将来における患者・市民のニーズに即応できるからである。

(1) 多様性(各種学部卒の学識)(各種職業体験の知識・経験)(幅広い医療)
(2) 実用性(臨床医に特化)(既存大学併設病院の活用)
(3) 人間性(社会体験あり)(人間教育の重視)
(4) 即効性(在学年数が少なくて済む)
(5) 経済性(少ない在学年数)(既存施設・人材の活用)(民間活力にも期待)

3 「メディカルスクール」の位置づけ

「メディカルスクール」は、高卒新入生は受け入れず、学士号を有する者のみを入学させる4年生の大学、もしくは4年生の大学院として設置する。

4 要請活動

既得権益の主張など「メディカルスクール」の創設には障害も予想されるので、患者・市民の立場から、今後、健康医療市民会議として「メディカルスクール」の創設を強く要請する活動を展開していく。

以上

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