市民本位の健康医療に向けて

第51回(6月)定例会報告(メモ)

2012年6月25日 by KISK事務局  


第51回(6月)定例会報告(メモ)

6月の定例会は、あいにく、台風4号の接近の予想される中、19日、赤坂ツインタワーのTKPの会議室を借りて開催。中間報告に続いて、代表から市民学の第9弾となる「うつ病予防の法則」、国際介護予防センター社長の小川真誠様より、同社がタニタと共同開発した「心身バランス計」の紹介とデモ、東京大学医科学研究所特任助教の松村有子先生の「がん何でも相談室」がありました。

<中間報告> 梶原代表

前月5月の第50回定例会を簡単に振り返った後、今6月定例会の内容の紹介、次回7月定例会の予定などのお話がありました。

<市民学第9弾「うつ病予防の法則」> 梶原代表

最近、うつ病が大きな社会問題になっている。50冊を読破。まず二つの参考図書からうつの全体像の問題提起をしたい。第一は週刊東洋経済6月16号「人ごとではない うつ・不眠」の記事。今や国民病となったうつ病と不眠の現状と予防・治療法を追ったもの。「新型うつ」などと症状も多様化している。一生で何らかの精神的疾患になるリスクは24%との試算。厚生労働省は2011年、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾患に精神疾患を加え5大疾患とする方針をきめた。1996年の20.7万人のうつ病患者が08年は70.4万人に拡大。医療機関を受診した患者は100万人を超え、予備軍が4~5倍とのメンタルヘルス専門家の見方。単純計算で500万人以上が悩んでいることに。うつの主な症状は、眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくない状態が続くこと。2週間以上続くとうつの可能性が高い。増えているのは30~50代の働き盛りの世代。新型うつは、症状がでるのは仕事中、自責ではなく他罰的感情を持ち診断には協力的との特徴が。うつ病関連学会が共同でまとめた「うつ病対策の総合的提言」では「うつ病の原因解明と根本的治療法・診断法・予防法開発のための総合計画(抗うつ研究開発10ヶ年計画)開始」を短期目標の一つに掲げる。厚生労働省は「20年までにメンタルヘルスの支援を受けられる職員の割合を100%にする」ことを具体化する「職場におけるメンタルヘルス対策委員会」での議論を経て改正案をまとめた。また高齢者には不必要な多剤大量処方が問題になることがしばしばある。「医師の知識が欠如しているため、きちんと診断されず、いろいろの症状それぞれに対してたくさんの薬を使われている患者さんがかなり多い」と臨床医の病院のトップは、現在の神経科医療の実態を問題視する。第二は内海聡著「精神科は今日も、やりたい放題 精神科は99%誤診!」(三五館発行)の紹介。精神医学はその精神症状を「脳の異常」ととらえようとしている。これに対し心理学は脳というより「心理的動向」を基調として考えていく。双方の協調はほとんどみられないのが現状。「脳の異常」というが、精神医学において、今ある疾病理論、薬物理論はすべて2012年現在も仮説である。医師の人格にゆだねられている。米国では精神科診断基準(DSM)のに改訂に対し大規模学会の心理学会第32部会会長が2011-10-22日公開質問状を公表し精神医療の抜本的改革を求めている。日本では精神病院の入院患者数31万人を超えるが、そのうち死亡退院は一か月1515人という厚生労働省の「精神保健福祉資料調査」のデーターがある。次いで同氏は、各種精神疾患の10の問題点、精神科を受診する前の10の心得、薬害の対処法5を具体的に厳しく御指摘。

以上が問題提起の図書の概要の紹介ですが、次にわれわれは「患者側市民としての総合的理解」として次のような認識と備えが大切と思う。まず「脳も一つの臓器」で、胃腸は食物消化システムの臓器だが、脳は「情報処理システム」の臓器。ハード(物理的形態と機能)とソフト(ソフトウエア)がある。各種臓器、器官、組織、遺伝子等それぞれ独立性があるが、同時に共通のソフトウエア「クラウド」を構成し思考や行動のパターンをコントロール。ハードの物理的損傷は手術か自然治癒力に期待。脳の血流不足はハード・ソフトの精神活動の不全をもたらす。口や指先の動きやウオーキングなどが脳の血量を増加させる。冷えも血液循環の障害。脳の活動は化学物質が媒介。そのアンバランスは精神活動の不全の原因に。脳の栄養不足を補う必要がある。脳の特質は「快脳」を好む、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚の五感から脳に快感を与え脳の活動を円滑化。中国気功は第6感として「氣覚」を指摘。脳力や体力の結束には氣力がかなめ。情報活動の乱れを防ぐには氣力を高めエントロピー(無秩序化)増大の抑制が大切。脳のストレス蓄積を防ぐため遊び休養睡眠大切。脳の正常な思考パターンを保持するため血縁地縁社縁が薄くなるのを改善し家族友人グループの温かい交流を促す。これらを総合的に考えることが大切。

次に「患者側市民としての対応」。脳細胞の再生はないとの100年のドグマからの完全な解放が大切。脳の自然治癒力の高めには、口や手足の運動による脳の血流の活性化・冷えの防止・脳内物質の不足を補う栄養補給が大切。脳の正常な思考パターンを保持し偏りを防ぐには、孤立感をなくす・スポーツや趣味など自己表現の場をつくる・社会のためになる自己実現の機会を増やすことが大切。また精神科の受診は「お任せ」でなく、事前に自分や家族が自主的に勉強してから医師の診断を受ける。心理療法も同様。薬物療法には特に慎重に。薬剤師のアドバイスをうけること大切。次回定例会でさらに具体的対応法を説明の予定。と締めくくられました。(配布資料は市民会議と健康医療市民倶楽部のHPに)

<「心身バランス計」の紹介> 小川真誠様 国際介護予防センター社長

梶原代表から「心身バランス計」は小川さんがソフト開発を担当し、タニタと共同開発し、ふらつきや立ちくらみ等の変化を測定し認知症やうつの改善へのチャンスを提供するものとの紹介で、小川さんが登場し、会場後部に展示の新機器の説明が始まります。心身機能活性運動療法を推進しているが、今回完成したこの心身バランス計は、市民の皆様が認知症の改善やうつ病の改善に自発的に取り組むきっかけになるものと期待している。タニタと相談し1年3月かけて開発した。めまい・ふらつき・ふるえ・転倒などの原因になる心身のバランスを測定しみんなが自分の状態を知り、認知症、脳梗塞、うつ病、てんかん、パーキンソン病の早期予防、兆候の早期発見、早期改善に動くきっかけになる。「めまい」は他人にはわからない自覚症状で心理現象、回転めまいや傾斜感等がありめまいを感じている場合には、多くの場合ふらつきが認められる。「ふらつき」は他の人にも観察できる他覚症状で身体現象。平衡障害や運動障害等がある。一度起立歩行を身につけたヒトは終生その能力を保持するのが通常だが、老化や脳や神経系機能の障害で起立歩行の不安定の危険が増す。老人が転倒する主な原因は、つまづいた・滑った・ふらついた・めまいがしたである。

心身バランス計に乗り、直立すると体の重心が動き、その人特有の軌跡を描く。このシステムは、元放送大学教授・平澤弥一郎先生の、人のすべての動作の基本である直立能力を評価する「スタシオロジー」(身体静止学)に基づいています。平澤弥一郎先生は50年間広く世界的に学会活動をされ、「スタシオロジスト」と呼ばれました。私は25年前にこの理論を勉強し、「心身機能活性運動療法」を開発し実践しています。この心身バランス計は高齢者転倒の早期発見、ストレスの早期発見、生活習慣病の早期発見・運動能力低下の早期発見、学童体力低下の早期発見に役立ちます。また具体的測定の概要をご説明。事前に測定し「心身機能活性運動療法や心身体操」を経験して、一か月後や三か月後に測定すると動揺地図の変化が観察できます。また自動車運転免許保有者で75歳になると更新の際の検査がありますが、事前の身体運動などがその改善に寄与できると考えます。お医者さんもこの運動療法を活用されている方もあり8月に出版予定の新版の心身機能活性運動療法の解説書などで内外でのその成果を明らかにしたい。これらの総合的推進は、社会全体の医療費や介護費用の改善に大きく寄与すると期待します。と締めくくられました。小川先生の心身機能活性運動療法の具体的内容は20年8月第五回定例会「認知症は治る」、23年2月第35回「認知症予防トレーニング・運転感覚強化プログラム」でお話しいただいておりその概要はHPに。

<「がん何でも相談室」> 松村有子先生 東京大学医科学研究所特任助教

梶原代表からかって医療改革懇談会でもお世話になった幅広い立場から医療問題に取り組んでおられる東大医科研の先生との紹介でご登壇され、力のこもった丁寧なお話が始まる。平成8年東京大学医学部卒で、東大付属病院、虎の門病院、都立駒込病院、東大医学研究所付属病院で血液腫瘍内科・造血幹細胞移植に従事し白血病の研究も。06年から東大医学研究所で先端医療社会の連携部門での研究に従事。日本対ガン協会の室長にもなり電話でのガン医療相談を担当。本日は皆様のガンの具体的相談にお答えしたい。まず既に提出の8つの質問にお答えがありました。

Q1「ペットという検診法を良くきくが、信頼性はどの程度か」。≪補注コンピューター断層撮影CTで体内に注入した放射性物質のγ線を検出するポジトロンCT・PET≫これはガンの総合検査で糖分に近いものを注射したものの反応を断層的に全身を一度に診ることができる。映像で問題の場所が光る仕組みとその事例を写真でご説明。全く塊になっていないものや、すごく小さいものは難しいこともある。

Q2「検診センターでガンといわれたらとりあえずどうしたら良いか」精神面のコントロールが大切。まず知ること(専門病院の診断や検査)、次に評価する(質問したり情報収集・方法を考える・自分の仕事との関係も)。治療法は手術・投薬・放射線治療だが、専門家・家族・友人への相談に加え、専門でない医師も広い知識の方多いので頼ってみよう。一人で考えたり最初から考えるのは大変なので前もって勉強して知識にしておくのが効果的。梶原代表の「がんの予防と治療の市民学37頁と五原則・十か条」などは幅広いし、参考図書や情報サイトも記載で参考になる。自分で勉強し、最後は自分で決める。

Q3「今は治っているが、再発を防ぐためサプリメントなどを教えてほしい」。特定の物質が万人に効果的というものはない。飲んで安心できるもの、「バランス」が大切。まず原因をさがす、何が悪いのかさがす。心身の活力の氣の持ち方や美味しいものを食べることが大切。ある人に良いものが全ての人に良いかは判らない。また10年先までそれが一番かは判らない。

Q4「ヘビースモーカーでもがんにならない人がいるが体質でしょうか」。病気と遺伝子との関係、薬の有効性や副作用の研究、DNAの損傷やゲノム解析の研究もすすんでいる。遺伝子の個人差、炎症の起こり方、家族病歴・性別・年齢との関係等100超える多くの論文が発表されている。

Q5「H23年4月から1年余に、MR、CT、RET等の検査を計11回受診。ときには1週間でCT(頭部)、CT(胸、腹、骨盤)、PET(全身)と検査を受けたが身体への影響はどうか」。m㏜でCTは9~13、PET/CTは6。メリットとデメリットを判断して受ける。X線と比べての判断も。≪MRIは磁気共鳴画像検査≫

Q6「中国上海の友人から妻の甲状腺がんと中国で診断されたが日本で治療を受けたいとのこと。癌研(有明)など以外に専門病院があるようだが、紹介できる病院はありますか」。手術、放射性ヨード、化学療法、放射線療法や濾(ろ)胞ガン等の具体的症状や対応に応じた具体的病院名のお話がありました。また高齢者は様子をみることが大切な場合もある。

Q7「友人が前立腺がんで、骨に転移、5年生存率30%と言われた。いわゆる5年生存率はどの程度信用がおけるのでしょうか」。数年前の統計だと思いますが、治療法や体力により変わります。ステージのどこにいるかで確率が違いますが、日本の病院ではとても良く説明していると思いますが。いずれにしろ新しい治療法で変わってきます。

Q8「平岩正樹先生の著書に『アメリカには抗がん剤の専門家4000人以上いるが、日本には数えるほどしかいない』と書いてあるが、これは事実でしょうか。事実ならば、どうしてそうなったのでしょうか」。米国は2005年の数値ですが、日本では2006年に日本臨床腺癌学会が癌薬物療法専門医制度を認め、従来の内科外科の区分に臓器別区分を決めました。今後は大きい病院では病気の名で科が選べる配置になっていくと思われます。

次いで会場からの追加質問にお答え。イ「PETは健康診断の簡易な方法ともいえるが健康保険の点数はどうなのか」健康診断では点数はつかない。リンパ腫の再発の診断のような具体的医療の内容なら別だが。ロ「ガンは生活習慣病とされるが、その要点はなにか」野菜食・コーヒー・タバコ・アルコールとも体の体質により影響は違う。例えばアルコールは分解酵素の力が人によって異なる。いろいろフォローはなされているが。会場から松村先生の先ほどのお話のように「バランス」が大切で酒でも悪いと思って飲めばうつになってしまうとの発言も。ハ「ガンワクチンの認定を米国でやるようなことがあるが」日本では臨床検査が進まずそのような場合もある。ニ「ガンの遺伝子検査はどのくらいの費用か」10~20万円程度と思う。と非常に具体的にしっかりとお答えいただき、拍手喝さいが続きました。

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