市民本位の健康医療に向けて

第48回(3月)定例会報告(メモ)

2012年3月30日 by KISK事務局  


3月22日(木)南青山の国際医療福祉大学大学院にて開催。梶原代表の中間報告、市民学第6弾「21世紀型市民健康学」と帝京平成大学教授久島達也先生の講演「これからの医療における鍼灸の役割」のお話を中心に聞きました。

Ⅰ)中間報告 梶原代表

情報の共有として、2月の定例会では、㈱星野リゾート渡邉径子様の「温泉と入浴で健幸」のお話が有益であったこと。今回3月は代表が予定していた「若返りの法則」に代えて「市民健康学」を先行させたこと、今回講演していただく鍼灸の久島先生の紹介、次回4月はインターフェロンの発見で有名な小島保彦先生の講演の案内などのお話がありました。
「自衛策」として、現在フェースブックに「健康医療市民倶楽部」のコンテンツを開発中であること、その中に「健康道場」を作り、市民各自が自分なりに作成した健康法の実施状況をフォローアップしたり改善したりする仕組みを乗せるよう検討中であることの報告がありました。

Ⅱ)21世紀市民の常識シリーズ第6弾 KISK式「21世紀型市民健康学」 梶原 代表

前述のとおり、予定変更、「21世紀型市民学」の話となりました。
初めに、21世紀の健康医療は素人がわかりやすい発想が必要で、患者側市民の体験情報が重要であること、患者、市民が積極的に参画して、より良い健康・医療を実現していくことが必要であることを強調。
KISK式「21世紀型市民健康学」患者側市民の英知、体験、パワーによるコラボレーションにより進める。その協働の柱は、1.「クラウド」健康法、2.「類人猿」健康法、3.「親和力」健康法の3つ。

1.「クラウド」健康法
脳は一方的な司令塔ではなく、臓器、器官、細胞、遺伝子等と協働で状況 や環境に敏速に対応している。脳をスーパーコンコンピュータに例えれば、他はPC。協働で「クラウド」(雲・共用ソフトウェア)、人体情報システムを構築している(上図)。人体情報システムが円滑に稼働するためには「脳」が正常に働かなければいけない。脳が正常に働くには、五感から脳に快い刺激を与えることが大切。強制、禁止、拘束などは脳が嫌う。

2.「類人猿」健康法
人間は特に大脳の発達により格段の進化を遂げたが、身体は類人猿と大差なく、遺伝子レベル でも2~3%の差。このような類人猿の生活に身体のメカニズムはマッチしているので、健康法も身体メカニズムに即したものになる。現代社会では類人猿並の生活は不可能。現実の生活と身体メカニズムの折り合いが重要。

3.「親和力」健康法
人体は、家族、地域、団体、都市にいたる人間集団という器、そして人間集団は自然と言う器、自然は宇宙という器に盛られて順応と調和すなわち親和力で器と中味が相互に影響し合っている。宇宙では、すべて相互に関係し、孤立した存在は一つもない。人間集団との関係では、その集団が生き残るために好都合な人間が優遇される。アメリカの小学生1500人の追跡調査では、誠実、勤勉、広い社会的ネットワーク、身体活動、生涯現役・生涯学習といった性格が長寿に結びついているという結果が出た。
以上3つの健康法に加え、「市民健康学5則」、自分流「健康市民学10か条」、健康法に関する情報チップ、これらを学んだ参考図書の紹介等。まとめとして、これからも予防中心の東洋医学、対症療法としての西洋医学、情報、時間を加えての四次元、世界で初めてのアプローチで市民学を追求してゆくとのお話でした。詳細は、当会ホームページをご覧ください。

Ⅲ)これからの医療における鍼灸の役割 帝京平成大学 教授 久島 達也 先生

まず、世界の主要国における医療の満足度の調査結果の紹介があり、スウェーデンの満足度75%でトップ、日本は15%で22か国中最下位であったとの報告からスタート。鍼灸の話の前に健康と言う概念について考える。私は必ず3つのキーワード、呼吸、睡眠、排泄から入る。現代社会の精神的ストレスが、吐けない、寝られない、出ない、が病気のもとではないか。生命力低下しているが、計る検査はない・・・異状なしとなる。
一方病気は生活習慣病と置き換えられる。先週、健康日本21プロジェクトの報告があったが、成績は6割の達成。大学でいえばCランク。この成績は西洋医学に盲点があるからではないか。東洋医学、漢方医学にそれを補うことは出来ないか、と考える。健康とは、からだが生命本体の目的に合致、生命力が充実、生命の仕組みが円滑に機能、からだの基本構造がしっかりしている、と考える。アリストテレスの言葉を借りれば、生命の原理は「受け取って出す」こと。学生が試験の答案用紙に描いたチクワの絵にAを与えてしまったが、チクワは人間の原理を伝えるものであり、もともと体は腸から出来ていること、原始的な生物は腸から出来ている、ことを表している。呼吸、睡眠、排泄を円滑にする、つまり養生を重視することが漢方の考え。
鍼灸の話。鍼灸医学の特徴は熱い、痛い、治る。普通血は出ない。自然治癒力が大きい・・正気=邪気を入れない。非薬物療法である。どこを刺激するか・・・ツボ=経路経穴。経路14。経穴は361穴。鍼灸治療とは、診断し、適切な刺激を与え、歪みを是正すること、それが病気の予防、改善につながる。診断法の一つは脈診、患者の脈に触れて症状などを把握する。実際の鍼を見る。注射針より細く、髪の毛と同じ程度の太さ、すっと入る。鍼を刺し入れて低周波で通電することもあるが痛みの緩和に役立つ。艾(もぐさ)はヨモギ(蓬)の葉から作る、葉の裏の毛を精製したものでborneol という成分があり、抗菌作用がある。ではなぜ鍼灸は効果が出るのか。必ずしも鍼灸を使わなくても触圧でもツボに刺激を与えれば効果がある。刺激は反射してそこだけに効果を及ぼす(応答する)場合も、一旦脳に伝わり応答する場合もある。
生体機構が、内分泌系、神経系、免疫系の調節を試みる。すなわち自然治癒力を発揮する。免疫系の代表的な抗体であるIgAは、マウスの実験では、処置しない場合より麻酔した場合、麻酔より鍼灸を施した場合はさらにぐんと増える。少しずつ科学的根拠も出てきている。 艾にはヨモギ同様の精油成分が含まれ、抗菌効果や自律神経調整作用をもつ。
鍼灸治療には必ず“手を当てる”が、これが一番の効果かもしれない。鍼を打つ時、灸をする時には肌に触れ、ぬくもりを感じ、安心、共感、思いやりの心が伝わる。
WHOが1979年に公表した鍼灸の効果が認められる疾患は、神経系、運動器系、循環器系、呼吸器系、消化器系、代謝内分泌系、生殖泌尿器系、婦人科系、耳鼻咽喉科系、眼科系、小児科系などほとんどすべての医療分野に及ぶ。
日本医学教育学会では漢方医学卒前教育の標準化に取り組んでおり、少なくともたとえば鍼灸とは何かを知らずに卒業と言うことは避けたい。
鍼灸学部・学科は現在10の大学で設置されており、うち総合大学は帝京平成大学のみ。池袋に帝京池袋鍼灸院がある。来院者の主な症状や疾患は次の通りで、他の病院等で治らないとかで来られる患者さんが多い。肩こり腰痛ばかりでなく幅広い。

『頚腕通、肩こり、顎関節痛、腰痛、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性必関節症、過敏性腸症候群、便秘、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、蓄膿症、頭痛、排尿障害、生理痛、眼精疲労、慢性関節リウマチ、難治性疼痛症患(線維筋痛症、外傷性頚部症候群など)、脳卒中後遺症など』

鍼灸に関しての質問に対する答えとして、
・がん治療に関して、抗がん剤は正常細胞にもダメージを与えるが、鍼灸と言う非薬物療法がそれを守っているのではないか。直接効果かどうかはまだ不明。
・脊柱管狭窄症は治ると断言できないが、多くの方が満足して通って来られ、少なくとも痛みの解除には役立っている。まず安心感が生まれることがよい。
・脳腸相関と言って、脳と腸は密接な関係。脳がなくても腸は自律的に働く。医学的には脳の研究ばかり行われていたが腸についてはこれからと言える。腸神経系はまだ不明なところが多い。
・花粉症は改善される。アレルギーに関する抗体にはIgEとIgAがありIgE が過剰に働くとアレルギーが発症する。IgAが多いとIgEを抑える。鍼灸はIgAを増やす。花粉症はゆったり生活になると起こりやすい。IgE抗体が増えやすい。外出を控えないで体を動かす方がよい。交感神経型の生活がよい。

以上、鍼灸の幅広い効果と今後の役割について大変有益なお話を聞きました。

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