市民本位の健康医療に向けて

第35回(2月)定例会報告(メモ)

2011年2月21日 by KISK事務局  


第35回健康医療市民会議・定例会講演メモ
(平成23年2月15日(火)16-18時・南青山・国際医療福祉大学大学院 東京サテライトキャンパス5F)

1. 「KISK式認知症予防法(患者・市民が学び・実践する認知症の予防法)」梶原拓 健康医療市民会議代表

三年前の会の発足前準備会の最初の講演で小川真誠先生の20年前から推進の認知症改善プログラムを拝聴し、心身機能の体系的運動が大切だと考え国際介護予防センターとしてこれを支援してきた。小川さんが上海政府との契約で推進の改善プログラムとその成果をNHKが3月現地取材する。地域センターの形のものも昨年平塚市で第一号がスタートし、長野県茅野市でも準備中。また、高齢者運転は事故との関係から警察庁は問題のある者の免許返上の施策を推進しているが、その事前の予防的活動が、実生活での重要性との関係からも大切と考え、警察庁や指定運転試験場の全国団体とも相談しながら「運転感覚強化プログラム」の立上げを推進中。

私も60冊以上の本を患者・市民の立場から読破した。認知症は「アルツハイマー型・脳血管性・レピー小体型・前頭側頭型」があり、原因や症状は配布資料の通り。従来脳の神経幹細胞は再生しないとされたが、最近、新生ニューロンでの脳の成長が判明した。神経外科医「ベンフィールドマップ」は資料の通り、体から脳へのインプット「体性感覚」では手と顔の影響が強く、脳から体へのアウトプット「身体運動」は指令を発するのは前頭連合野で体ではやはり指と顔や口が強く、体へのインプットとアウトプットは隣り合う場所にあり、小脳と大脳基底核が運動を補佐する。これには活脳体操・ウオーキング・筋力トレーニング(成長ホルモン発生)が効果的で、小川式の心身機能運動が脳を活性化させるのが分る。また脳と健康「健脳食」の立場からは酸素やブドウ糖やビタミン・抗酸化物質・脂肪酸・アミノ酸等が必要だが、2%の重さの脳が、酸素消費量の1/5・ブドウ糖消費量の1/4の膨大な量のエネルギーを使い続ける。食事では特にカレーが良く、インド人の認知症は米国の1/4で認知症に効果あるようで、野球の一郎も毎日カレーライスを食べる。
市民・患者の視点での「KISK式認知症予防十箇条」を早期にこの会議の定版として策定し普及したい。有志の勉強会を始めるので希望者は申出を。また十箇所条の策定や運転感覚強化プログラムの推進について横倉先生を中心の専門家の研究会の発足を準備中です。

2. 「認知症予防トレーニング」小川真誠 心身機能活性療法指導士会理事長

指導士会の橋本明会長や梶原代表に25年前に開発した認知症の予防と改善の心身機能活性運動をメインの一つとして支援いただき三年余だが、そのプロフィールの本「認知症が目に見えて良くなる改善プログラム」(亜紀書房)はベストセラーではないがこれを読んだ方には大変喜んでいただいている。日本及び台湾でのこれまでの活動と03年からの上海での心身機能活性運動療法による認知症高齢者、発達障害児への改善実績と長年に亘る実践活動が評価され、本年1月上海市政府の推薦により「アジアGuinnessベスト貢献賞」を受賞した。認知症高齢者は05年180万人だが2035年には445万人2.2倍の見込み。介護も「老々」から「認認」へと悲惨な状況や虐待が新聞で報道。認知症は介護だけだとされてきたが、予防と改善が一番。生活習慣の改善の心身機能活性運動(脳と心と体を鍛える)の活用が大切。精神安定剤や睡眠剤では脳の働きの本体を日常的に良くすることにはならないのでは。認知症の症状は、記憶力低下や見当識障害や思考判断力の低下、それに味覚臭覚等の周辺症状、徘徊大声等の特徴的行動など、日常的生活での障害があり、介護の難しい現状や介護家族の悩みを図面で判りやすくご説明。

「認知症改善プログラム」の全体像は、事前運動としての「心身体操」次いで「1活性温熱療法」「2フィンガースポーツ運動」「3フラハンド有酸素運動」「4ゲーゴルゲーム運動」「5回想療法」を毎日繰返えし、三箇月続ける。愛情ある行動で精神的に落ち込んでいた活動が取り戻せる。指導者と向き合って一緒にやる。実技の詳しいご説明。脳の司令塔の前頭原野を活性化させる。周りの人との触れ合いやお互いに認めあう交流や喜びあいで人間力が回復する。認知症だけでなく、自閉症や引き篭もりや脳梗塞脳卒中の後遺症、若年認知症や能障害児の改善もできる。プログラム三ヶ月で改善効果が。従来脳の神経細胞は新しく生れないとされていたが、先日の発表で新しく生れるとされた。刺激しないとだめ。年齢に関係なく認知症の予防にもなる。「だめの常識」を覆した。プログラムにより専門家でなくても改善ができる。高齢者の実に8割が認知症の症状。この改善は生活習慣病の改善、ひいては地域の活性化に。施設に頼んでも重度の人は入居を断られる。家族や子供も限界。

次いで「三つの改善事例」をビデオ映像でご説明。全て三ヶ月で重度の認知症の改善が分かる。第一の例は、沖縄の特養長寿苑でのアルツハイマー認知症。高齢の男性。18年大声あげて人の言うこと聞かない。孤立。握力も弱かった。温熱療法・フィンガースポーツ・フラハンド運動での前頭葉刺激等のプログラム完全実施、三ヵ月後改善し身体測定器にもバランスよく乗れる。ちゃんと座って話す。机でお絞りを折って整理。お茶も手で飲める。トイレにも行けオムツもとれた。本人も家族も大喜び。娘もエイエイオーと頑張る。一年二年三年、退院後二度と前のようにはならない。第二の例は上海の施設。04年。徘徊、怒りっぽい・無気力・無感動・協調性なし。二ヶ月でゲーゴルゲームも毎日。自分の部屋分らなかったが3ヶ月で部屋の番号を確認し一人で帰れる。麻雀も出来るようになる。第三の例は、上海市の直轄病院。05年。脳卒中後遺症。体を縛られて・いつも怒っている・元共産党高官。週3回のプログラム。一ヶ月で座れる・二ヶ月で輪投げできる・普通の生活に。三ヶ月全く正常に。三ヶ月が終了し、お祝いにダンスもした。

次に高齢運転者の交通安全問題。免許保有者75歳以上283万人、70-74歳333万人、65-69歳491万人。運転事故総数は平成元年比で0.59倍と減少だが高齢者事故は2.75倍。09年から75歳以上の運転免許更新時に認知機能の講習予備検査が義務。一年間の受検者76万人、うち1.9%の1.4万人判断力低下指摘・最終的に39人取消&73人自主返納。高齢者の8割は運転しているが、免許証返上すると、とたんに家に閉じこもるようになる。地域では生活上も大変。そのため事前に予防や改善を図る心身機能改善運動等の「運転感覚強化プログラム」の構築と利用の普及を準備中。

また認知症の傾向を簡易に判断できる体重計型の簡易な「重心動揺計」をKKタニタの協力で開発してもらった。これは両足次いで片足の直立で20秒ずつ乗り、中心点の揺れる線を記録しその図形を本人も判定者も目視できる。中野区役所の施設での心身機能運動の実施の前と後の記録を比較したが改善状況が良くわかる。

重心動揺計の試作器を休憩中に多くの会員が利用し自己の記録を確認でき、すごく関心を持った。足の指先に力をいれると少し前に重心が行き安定する。腰が悪いと後ろに重心が行き揺れが大きく。うつ病も同じように計測できる。認知症の波形について以前、運動生理学の放送大学教授平澤弥一郎医学博士の体と脳と足裏との関係の講義を聴き、揺れが正常になるよう20数年前このプログラムを開発した。元気な人や予備軍が予防を含めて活用してもらうことは大変有意義。次いで小川講師の紹介で―

3. 「第一号「地域センター」の平塚市での改善業務の成果」中澤聖人室長(指導士)  KKユーミーケア認知症・脳卒中改善相談センター責任者

会社の老人施設「シニアメゾン四乃宮」で改善事業の責任者をしている。会社は26の高齢者の施設や住宅を経営。申込希望者を対象に医療保険なしで実施。今回の最初の対象者は85歳で介護度3の男性。本人と家族の同意で経過写真も説明。心身機能活性運動を22-10-4日からの90日プログラム・月曜から土曜の毎日10-16時で実施。当初重心動揺計の揺れは相当あったが、10-18日、12-1日、1-26日の測定で図形の変位が減少。当初は手を取らないと歩けず歩幅も小さく食事もペーストで1時間半から2時間かかっていた。改善運動が始まると数値の確認、会話や意思表示も明確になり、気力体力がつき3日で車椅子に固定装置を着ければ一人でエレベーターに乗って動くようになった。終盤のウオーキング練習では近くの公園を小さな車椅子を手で押して散策。介助食は当初ペーストだったが、終了後2月5日に新江ノ島水族館を見学したときは自分で入場券の対応もし、カツサンドも希望で食べた。施設の5&6階には認知症高齢者が入居。そのうち男女各1名も運動に参加。施設では食事や風呂は職員の時間配置でやるが、その他の生活時間の過ごし方が全く違う・ボーっとして内に籠っているのとは全く違う。1階の改善運動の視察見学者には先に5&6階の通常の入居介護者の生活状態を見てから来てもらいその差が良く分かったようだ。顔の血色も良くなり、頭髪に黒い毛が混じって生えてきた。腕ふり、もも上げ、前腕と肩の筋肉も強くなり人間力のすごさが分る。その経過を写真の報告書でご説明。本人と家族の笑い顔を取り戻すお手伝い、すごいですね。医療保険なしの宿泊と食事付きの料金で90日分。本人も家族も職員も大喜び。治らない介護から症状が改善する楽しみのある心身運動の手伝いで施設の職員、特に若い職員の生甲斐や志気が全く変ってきたと思う。この建物の施設には指導士資格者は8名いる。

4. 次いで講師三人への質問 「薬は飲まないのか」「三ヵ月後自宅に帰ったらまた元のようにならないか」「運動のうちどれが一番効果あるか」「効果の判断は」に対しては、「薬は飲ませない。飲んでいた薬も自分の意思でやめたものある。問題はでていない。運動で脳機能が活性化するのではないか」「帰ってから元に戻ることはない。日常性を改善し家族ともども毎日の積極的運動が続くので。家族の喧嘩もなく感謝の気持が皆に涌くようだ。 国の財政支出の改善にも資すると思う」「個別でなく全てをプログラムとして一括して行なう。個人差はなく誰でも同じだと思う。車椅子3-4年の人・脳卒中の後遺症の人・子供の自閉症・脳性マヒの子供も同じく改善するようだ」「論より証拠。体験的エビデンスでの自己や家族の判断が大切・重心動揺計の揺れの記録も目視でき重要」とのお答え。

5. 最後に小川先生の指導により会場全員で四つの動作で構成される「心身体操」を立位で行なう(座位やベット上でも可)。各動作8回を四度繰り返す。「1拍手運動(神社お参りのイメージで手の平を強くたたく)」「2山登り運動(手を開き、左右の指に力をいれ、岩場を手で登る気持で交互に腕を挙げる)」「3羽ばたき運動(手をしっかり握り脇に近づけて揚げ鳥が両方の羽根で空に羽ばたく気持ちで体側に打ち下ろす)」「4万歳運動(両腕を上に揚げ万歳し、大腿部に軽く手を打ち落とす)」。からだ全体にエネルギーが涌き、何時も力を入れない掌の握りや大腿部刺激で気持が良く、素晴らしい講話へのお礼を含め三人の講師への盛大な拍手喝采が続きました。

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