市民本位の健康医療に向けて

抜本的医療改革断行の提言

2009年6月4日 by KISK事務局  


医療改革懇談会では、遠からず実施される総選挙を前に、患者・市民の立場に立って実施されるべき医療改革を、国会議員、医療専門家の方々のご意見を参考に、全体会議あるいは個別の協議を重ねてきました。このたび、次のようにまとまりましたのでご報告します。総選挙では、政権公約、マニフェスト等に組み込まれるよう、また、実現されるように市民が手を携えて声を上げていきましょう。

平成21年6月2日

健康医療市民会議代表 梶原 拓
同医療改革懇談会座長 大竹美喜
構想日本代表     加藤秀樹

抜本的医療改革断行の提言

「医療の崩壊」が極まり「日本の崩壊」が進行している。
救急患者のたらい回し等が生活不安を助長し、公立病院の閉鎖や縮小が地域住民の受診機会を奪って社会不安を招いている。産科、小児科の不足は妊婦や子供の生命を危機的な状況に追い込んでおり、現場を支える病院勤務医も過重労働で疲弊しきっている。
がん患者の死亡者数は年33万人余と、減少の兆しも窺えない。認知症患者も増加の一途を辿っている。このままの施策をつづければ、高齢化ピークの2025年に向けて、がん難民や介護難民の増加は止められないであろう。
一方、長年にわたる医療費抑制策や小泉改革による機械的な国庫負担削減で我が国の対GDP医療費は先進国中最下位クラスに落ち込んでおり、限られた医療財源の中でのパイの奪い合いは「医療の崩壊」を加速させている。
こうした難局を打開し、将来に亘って日本国民が安心して「健康で文化的な生活」を営むことができるようにするには、これまで行われてきたような既得権益間の利害調整に終始した体制を改め、「市民の、市民による、市民のための」真に民主的な医療体制を樹立しなければならない。
このため我々は国民、市民の立場に立ち抜本的な医療改革の断行を提言する。来るべき解散・総選挙を医療の抜本的改革のチャンスと捉え、国会議員、同候補者に対して重点的にアピールするものである。この動きを国民、市民の幅広い改革運動に発展させて行きたい。

提言1 「医療改革国民会議」の設立
官僚の省益を超えられない一部政治家、特定の医療官僚、専門家集団に独占されている医療政策を、本来の当事者である国民、市民の手に主導権を奪回するため、既得権益に害されない各界・各層の国民代表からなる強力な「医療改革国民会議」を創設する。同会議において医療の抜本改革に関する目標と工程を定めた基本方針を策定し建議する。これを受け、総理が長となる「医療改革推進本部」が速やかにその実現を図る体制を確立する。
なお「医療改革国民会議」においては、緊急課題である「医師不足対策」の策定を急ぐ。我々は別紙の通り、既に昨年8月5日「医師不足対策緊急提言」、9月5日「メディカルスクール創設の要請」をアピールしてきたところである。患者、市民が今、切に求めるのは、患者の気持ちが理解でき臨床技術に長けた医師と看護師等コメディカルである。

提言2 地域主権と市民参加
国民、市民の生命に直結する医療政策こそ最優先で民主化を徹底すべきであり、現行の行き過ぎた中央集権体制を打破する必要がある。このため、各都道府県が5年ごとに策定する地域医療計画に関わる権限と財源を国から都道府県に一括委譲し、自治医科大学および各県医科大の協力を得つつ、地域特性に見合った医療提供体制を計画・実施できるよう医療行政の分権・地域主権を実現する。同時にそれぞれ「都道府県民会議」および「市町村民会議」の設立を法定し、地域医療政策の決定に住民が当事者として主体的に参加できるようにする。
なお、我々市民側で、国民の権利としての「医療を受ける権利」、「患者の権利」と、それと表裏一体である「市民の義務」、「患者の義務」を包括する「患者権利宣言」策定の運動を進める。救急車の私物化、モンスター・ペイシェント、コンビニ受診などの公共財の乱用に対しては、患者、市民側の主体的な反省と自制が欠かせない。相互的な責任と義務を前提にした新たな患者・医療者間のパートナーシップ確立のために、我々は積極的に行動する。これに国・自治体の協力も求めるものである。

提言3 開かれた医療行政システムの確立と情報公開の徹底
政府において、臨床経験の乏しい医系技官や一部特定有識者などの硬直化した「閉ざされたグループ」で決定されている医療行政システムを廃し、現場の実態に精通した専門家や研究者の柔軟な任用を行うなど、新しく、かつ、柔軟な「開かれた医療行政システム」に変革する。
また、研究目的ですら閲覧が困難な統計情報をはじめとする政府の健康医療関連情報の公開を徹底し、透明で正確なデータに基づく医療政策の立案と検証のプロセスを確立する。

提言4 安定的な医療・介護財源の確保
「医療の崩壊」を食い止め、超高齢社会においても持続可能な医療体制へと再生させるためには、医療・介護を包括した安定的な財源の確保は不可欠である。そのためには、現在、対GDP比8.2%の医療費を、少なくともわが国の高齢化率と同等であるドイツ並みの10%程度を目安に安定的な財源を確保する必要がある(なお、2009年度の政府補正予算「地域医療再生基金」は年3100億円、3年間の暫定措置であり、長期的な医療改革の財源として期待できるものではない)。
当面、タバコ税等の増税の検討も必要ではあるが、抜本的な中長期対策として、医療・介護を一体的な公共財として位置づけ、①一般財源化された道路特定財源相当分などの医療・介護財源への転換等財源の再配分を行う。また、②現行の消費税を医療・介護目的に重点配分する仕組みに切り替え必要な財源を確保する。とくに地方消費税相当分の比率を高め、各地方自治体が必要な医療・介護財源に応じて自主的に税率を定めることができるよう法定化する、以上2点を実現することが必要である。
なお、病気の予防、未病(発病直前)対策、統合医療(補完・代替医療)等により患者の数や治療期間を減らすことが医療費・介護費抑制策の基本である。また、国民に対する医療・健康教育の充実、特に教育課程での教科「健康」の創設など、広範で柔軟な政策を要請する。

上記の医療改革を実現するため、我々は

(1)    各政党に対し上記提言をマニフェストに盛り込むよう要請する。
(2)    各候補者にも、それぞれ選挙公約に反映するよう求める。
(3)    志を同じくする患者・市民の組織・団体と幅広く提携する。
(4)    インターネット等を通じ国民、市民にも共闘を呼びかける。
(5)    政党、候補者の協力状況はインターネットで国民、市民に随時報告する。
(6)    マスメディアの協力を求める。
以上

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