▼ 統合医療ネットワーク

 患者・市民にとって「治る」という結果がすべて、「統合」とか「総合」は当然のこと。ということで、このコーナーでは、以下の項目に分けてお知らせいたします。

(1) JACTの記事について
(2) 統合医療実施病院・クリニック・施設
(3) 統合医療関係団体一覧
(4) 「統合医療都市」構想
(5) 「がん治療法総覧」の作成について

(1) JACTの記事について

 統合医療と「市民分権」

    〜市民パワーで壁を破る〜

日本再生研究会代表 梶原 拓

 2007年5月27日、東京大学本郷キャンパスで開催された「国際Healthy Aging シンポジウム」の記事がJACT季刊誌No10に載せられている。その中で、前日夜の懇親会で初めてお会いし、言葉を交わしたアンドルー・ワイル博士(アリゾナ大学教授)が統合医療を「ヒトの自然治癒力を引き出すための包括的な医療システム」と定義し、そのために患者の置かれた環境を含む「全人的な医療」が統合医療の本質であると述べられたと報告されている。これほど簡にして要を得た説明は外にないように思う。

 平成元年(1989年)岐阜県知事に就任後、早くから健康と医療の問題に関心を持ち、県民の立場から多くの健康医療政策を展開してきた。特に患者・市民を中心に考えると、病気の予防や治療を西洋医学だけに依存することに限界を感じたので、平成2年、県立下呂温泉病院に東洋医学科を設置したのを初め、同病院に東西ヘルスドッグ開設し、また全国に先駆けて岐阜県音楽療法研究所を創設するなど幅広く政策を展開した。

 平成13年(2002年)からは、渥美和彦先生のご指導の下、帯津良一先生など熱心な補完・代替医療推進者の方々のご参加を得て「南飛騨CAM国際シンポジウム」を毎年開催してきた。アイゼンバーグ博士(ハーバード大学)やクローネンバーグ博士(コロンビア大学)など補完・代替医療の代表的な先生方が海外からも集まって来ていただいた。

 JACT・No10の記事に戻るが、上述のHealthy Agingシンポジウムで、韓国の全世一・元延世大学教授は、「医学はそもそも、科学はでなく治療するための技術だった」ことを論証されたと報告されている。学者がどう思うかは別として、これこそ患者の気持ちを的確に代弁する言葉ではないか。患者が求めているのは、学会で発表される研究論文などではなく、実際に受けられ効果のある治療技術である。

患者にとって、理想の医療とは

 1 必ず治る
 2 早く治る
 3 痛くない
 4 お金がかからない

の4点に尽きる。

 西洋医学、東洋医学、民間療法「何でも有り」、治れば患者にとって「いい技術」なのである。いわゆる科学的な「エビデンス」も患者側が100%信用している訳ではない。臨床の医師ですら同様と聞く。厳重な審査を経て新薬として認定されたはずの抗ガン剤が、使用開始後間もなく、問題が発生し犠牲者が出たり、あるいは効果なしと判定される例がある。一方、漢方などは、人類が千年以上かけて数知れぬ不幸な「人体実験」の犠牲を払って結果を出した貴重な「体験エビデンス」である。患者にとって確かに医療とは「科学でなく技術」なのである。

 日本は、明治維新を境に欧米先進諸国に「追いつけ、追い越せ」とばかりに、欧米科学文明一辺倒となり、古き良き伝統文明まで切り捨ててしまった。世界でも類例のない暴挙(?)であった。当時、我が国が置かれていた状況からやむを得ないことであった、それなりの改革の成果があった、としても「追いついた」今日なお、その後遺症を引きずっているのは如何なものか!

 またまたJACT・No10に戻るが、日本の統合医療のパイオニア・渥美和彦先生と戦後改革派の草分け・野田一夫先生の対談は、「権威主義が医療の改革を阻んできた」という一点に焦点が合っている、楽しい、痛快な紙面であった。昔から森鴎外(森林太郎・陸軍軍医総監)のように「脚気は細菌が原因だ」と権威を振りかざした「鴎外症候群」は枚挙に暇がない。

 権威とか体制の頂点を極めた渥美先生が、一転して医療改革の先頭を切って泥を被りながら孤軍奮闘されて来たことは、真に頭が下がる思いである。優秀な頭脳ほど発想が柔軟だ。その後に続き改革を進める者は誰か。権威とか体制の利権構造に埋没している頭の固い連中には期待できない。権威主義によって被害を被っている本当の犠牲者こそが立ち上がらなければならない。それは日頃痛められ切実な思いを募らせている患者であり市民である。「戦後レジーム」どころか「明治レジーム」からの脱却が急務だ。私たちは今、「健康医療市民会議」を創立して、健康・医療を市民が考え、行動する運動を始めようとしている。「地方分権」を越える「市民分権」である。「市民の、市民による、市民のための健康医療」を目指し、地道ではあるが、着実に一歩一歩、目標に向かって力を合わせ努力して行きたいと思っている。
以上


 IMJの創刊を祝う「患者・市民本位の医療を願って」                08,4,3


 「健康医療市民会議」準備会代表 梶原 拓


 このたびのIMJの結成、そしてIMJの創刊をお祝い申し上げます。また、これまでの関係者のご努力に心より敬意を表したいと存じます。

 補完・代替医療の提唱から統合医療への発展。早くから学術面では渥美和彦・東京大学名誉教授がリードされ、臨床面では帯津良一・帯津三敬病院長がパイオニアとなられ、心ある方たちが保守的な医療の世界の中、茨の道を歩んで来られました。ご両所には、広く「県民のための医療」を目指してきた岐阜県知事在任中から格別お世話になりました。特に渥美先生には、南飛騨でハーバード大学アイゼンバーグ博士、コロンビア大学クローネンバーグ博士等を招いて開催してきた「補完・代替医療シンポジューム」などに格別のご指導をいただきました。歯科では福岡明先生が早くから統合医療を導入され私も無痛の治療を受けてきました。今日ようやく日本でも「補完・代替医療」あるいは「統合医療」として社会的に認知されつつあることは眞に喜ばしい限りです。

 只今、患者・市民本位で健康・医療を考え行動する「健康医療市民会議」を立ち上げるべく日夜奔走しております。患者・市民にとって「理想の医療」とは〜(1)必ず治る(2)直ぐ治る(3)痛くない(4)お金がかからない〜の4点に尽きます。このような患者・市民の立場からは治療法が西洋医学か東洋医学か、先端的技術か伝統的技術か、全く関係ありません。患者・市民本位の治療法は元来ボーダレスなのです。治療側の都合による垣根は邪魔なのです。結果として「統合医療」ということになります。

 不幸にして病気になったら、患者としては病気を治すため最適の治療法を選ぶ権利があります。また、医師・病院側と協働して病気を治す自らの責任もあります。この権利も責任も現状では殆ど機能不全となっています。原因の一つには患者側が治療法に関して医師・病院側に「丸投げ」していることに問題があります。一番大事な命に関わるだけに患者側自身がもっと勉強すべきです。二つには医師・病院側に広い視野から最適の治療法を選ぶだけ十分な診断、情報、判断および誘導に欠ける面があることです。高度に専門化・細分化された"たこつぼ医療"とは別に「総合臨床医」が必要ですが、その不在は現在の医学教育の重大な欠陥です。

 IMJの成否がイコール患者・市民本位医療の成否となります。ご発展をお祈りします。

 (元全国知事会会長・元岐阜県知事) 



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